なぜ日本政府は円安ドル高を望むのか?大局観で為替を見てみる

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なぜ日本政府は円安ドル高を望むのか?
大局観で為替を見てみる

 

| 意外に低い日本の輸出依存率!?

これは、一種の幻想を追いかけているだけなのかも知れません。

確かに、日本は輸出大国というイメージが常につきまといます。過去において、古くは繊維、鉄などの素材、高度経済成長期においては自動車や家電製品などを中心にして、日本は世界中に製品を輸出し、外貨を稼ぎまくったというイメージが、今も根強く残っています

当然、輸出がメインの国にとって、自国通貨は出来るだけ安い水準にしておきたいという思惑が働きます。1個=100ドルの製品を輸出して得られる円貨は、1ドル=100円の時だと1万円ですが、1ドル=120円になれば1万2000円で、2000円の為替差益が得られます。

ちなみに、トヨタ自動車は1ドル=1円幅で円安が進むと、それだけで年間の利益が400億円相当も増えると言われています。個別企業ベースで見れば、円安メリットは確かに大きく、それによって業績が改善すれば給料が増え、個人消費が上向き、景気は向上します。

しかし、国全体で見ると、状況はちょっと違ってきます。たとえば貿易依存度といって、一国の輸出入額が、その国のGDPに占める比率を計算すると、日本は28.11%で、世界のランキングは189位です。ちなみにトップは香港の337.4%ですから、とりわけ日本が貿易大国というわけではありません。

また輸出依存度といって、GDPに対する輸出額の比率を見ると、日本は17.4%で、これまた非常に低い水準です。米国の12.6%よりは高いのですが、それでもシンガポールは231.2%ですし、香港は212.5%もあります。その他の国で目立ったところを挙げると、マレーシアが109.6%、韓国が54.8%、そして中国が36.6%ですから、日本が世界中にどんどんモノを輸出して外貨を稼いでいるという姿は、少なくともこれらの数字からは伺われません。

【各国輸出依存度の比較】 ※出典:IMF、内閣府「国民経済計算」

 

| デフレ脱却には円安が有効と政府は考えた?

つまり、日本政府が円安を求めるのだとしたら、それは高度経済成長期の幻影を今もなお引き摺っているのか、もしくは他の理由があるのか、ということになります。

それは、デフレからインフレへの転換を図ることです。日本の失われた20年の元凶は、デフレ経済でした。もし、為替を大きく円安にすれば、国内に輸入されるモノの値段が上昇し、インフレの環境が醸成されます

ただし、輸入物価が上がっただけでは逆に、日本の個人消費が落ち込んでしまう恐れがあるので、円安が自動車をはじめとする日本企業の業績向上につながれば、株価が上がるのと同時に、従業員の賃金が増えるため、全体的に個人消費が盛り上がる可能性があります。そして、個人消費の向上によって物価上昇に火がつけば、デフレ経済から脱出できます

実現可能性はともかく、日本政府が円安ドル高を望んでいるのは、その背景としてこのようなシナリオが描かれている可能性が高いからなのです。このような背景を理解して大局的な視点で為替相場をみることが、中長期的のトレンドの予測をする上で必要です。

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